ある日、下顎右奥歯7番の第二大臼歯（だいにだいきゅうし）の意識が無くなった。 痛みに耐えかね治療に赴く歯の主。 ドリルを煌めかせる歯医者。 治療に震えおののく周囲の歯。 ただの虫歯治療と切り捨てるには不可解な状況の中、右下再奥歯の失神は本当にただの虫歯によるものなのか？ 何者かによる故意の虫歯だとすれば、そんな歯は"治療"すべきであろう... 陰謀と糖分渦巻く口内環境で、あなたたちは事態の真相を解明すべく話し合いを始めた...

ここはどこかの星。 そこに住む人間によく似たイキモノ、ヌシの口の中。 口腔衛生(こうくうえいせい)はまずまずの快適な環境で、今日も左下顎エリア(ひだりしたあごえりあ)の歯たちは元気に食べ物を噛み砕き、すり潰していた。 ところが舌の舌島(ぜつじま)が、急に「君たちは直に(じきに)全員抜けて、新しい歯に生え変わる」などと言い始める。 左下顎エリアの歯は定期的に虫歯だらけになり、そして生え変わるのが常だというのだ。 静かになる歯たち。 そんな歯たちに向かって、舌島は続けた。 「その未来を変えるには、虫歯になりかけの歯を今のうちに抜くことができればいいのかもしれない」と。 かくして、歯たちは話し合いを始めるのだった。