
パラドックス・ルーム
mixmeronpan
目が覚めると、あなたは真っ白な部屋に座っていた。
壁も床も天井も、塗りつぶしたように白い。無機質。無感情。
時計もなければ、窓もない。
あるのは鉄でできた重い扉。冷たく、閉ざされた出口。
その扉の向こうから、声がした。
「やっと目を覚ましたね、殺人犯」
言葉は静かだが、どこか嘲笑っているようにも聞こえる。
”殺人犯”
自分が呼ばれた言葉に、あなたは……。
……思い出せない。
名前も。顔も。なぜここにいるのかも。
何か、とても大切なものを忘れている気がする。
胸の奥がざわつく。
まるで、心臓が“それ”を思い出すのを拒んでいるように。