
同化法第零条 Genocc
鵜飼
世界最大の領土を誇る独裁国家――ケサント国。
その国は、徹底した情報統制のもと、外界との接触を一切断ち切っていた。
完全なる鎖国。
ケサント国には二つの民族が存在する。
支配者層であるケサント人。
そして、被支配民族――スタングル人。
彼らは容姿も異なり、言語も宗教も交わることはなかった。
だが、国家はその違いを許さなかった。
「同化」という名の暴力が、法律として制定されたのだ。
その名も「同化法第零条 Genocc(じぇのっく)」
スタングル人は信仰を奪われ、言葉を奪われ、人格を奪われた。
拒む者は収容所へ送られ、抵抗すれば命を絶たれた。
自由は、紙切れ一枚の法令によって、完全に消え去った。
だが、外界の目は光っていた。
ダユエセ国の宇宙衛星監視軍が、軌道上からの映像に異常を察知したのだ。
それは、スタングル人が次々と銃殺される衝撃的な映像だった。
ケサント国は冷酷な軍事国家。
勝利のためなら、どんな手段も厭わない。
その残虐さは、国際社会にとっても脅威だった。
宇宙衛星監視軍は、この事実を全世界へ公開せず、少数精鋭の特殊ユニットを編成し、スタングル人収容所への潜入を決断する。
目的はただ一つ――囚われた者たちを、闇の中から解き放つこと。