
笑顔で死んだ男
黛ゆう
あなたたちは、警視庁捜査一課の取調官。
同期入庁であり、捜査成績も肩を並べる良きライバルだ。
今回の事件の被害者は、あなたたちの大学時代のサークル仲間、桐山誠司。
無口で、真面目で、不器用で――滅多に笑わない男だった。
あの誠司が――死んだ。
現場は、都内高級マンションの中庭。
誠司は自宅のバルコニーから落下し、即死。
状況から見て、当初は自殺の可能性が高いとみられていた。
だが――
捜査を進めるうち、誠司がある銀座の高級クラブに通い詰めていたことが判明。
担当ホステスの名は、如月アカリ。
人気・容姿・会話力――すべてが一流。
一目で男たちを虜にすると評判の、華やかな女性だ。
事件当夜、アカリが誠司の自宅を訪れていた可能性が高まり、
あなたたちはそれぞれ別日に“如月アカリ”を取り調べた。
そして、現場で彼を発見した住民の証言が、謎をさらに深くする。
「男が落ちてきた。……笑ってましたよ。
血まみれなのに、穏やかな顔で……口元が、微かに上がってて……」
自殺なのか? 殺人なのか? それとも――別の何かか。
桐山誠司は、なぜ笑って死んだのか。
“如月アカリ”は、何を知っているのか。
――『笑顔で死んだ男』の謎が、いま幕を開ける。