
探偵シド・アップダイク KOBUSHI CLUB
RAMCLEAR・ウズプロダクション
とある繁華街の一隅に、会員制のクラブがある。
クラブは表向きはバーとなっており、羽振りの良いサラリーマンが来店する姿が見受けられる。
だが、一部の者はその店の本当の顔を知っている。
――KOBUSHIクラブ。
そのクラブでは、毎夜毎夜、屈強な男たちが己に賭けられた大金のために戦っていた。
その日も試合が行われていた。試合終了のゴングが鳴り、観客が全員捌けたあと、ひとりの男の死体が見つかった。
「こいつは アイアンフィストだ!」
メイン会場に転がっていた死体 その顔を見た男(クラシック・ジョニー)が叫ぶ。死傷者に慣れているはずのKOBUSHIクラブであったが、その死者は傲慢な挑戦者でも不運な観客でもなかった。
「な、なんだと?」
そこにいたファイターの一人( ジャガーノート ランディ)が駆け寄ってきて、アイアンフィストの着ていた服の袖を掴み、その腕をまくった。そこには、たしかに握り拳のタトゥーが刻まれていた。
「マ、マジだ アイアンフィストが死んだ」
伝説のファイターとして、無敗伝説を刻み続けてきた男が死んだことで、クラブは騒然とする。その混乱のなか、ふたりの男が前に進み出た。
「これは大変な事件になりそうだ 」
頭を掻きながら現場を眺める男は、鬼ヶ島満月。ここにはたまたま居合わせただけだが、彼はすでに多くの事件を解決している探偵なのだ。
彼は後輩の花木咲多郎を連れていた。実直な青年だが、探偵としてはまだまだひよっこである。
「鬼先輩、こんなアンダーグラウンドな場所で行われた事件でも、解決へ導くために努力すべきなんですよね?」
「当たり前だ。どんなところで起きた事件でも、謎があれば解き明かすべきだ。それにもうすでにあの幽霊探偵のデルデル・ユラーリィが俺たちより先に捜査を開始している。きっと重要な証拠をいくつも手に入れていることだろうぜ」
鬼ヶ島が虚空をビッと指差す。
果たしてこの即席の凸凹コンビに、KOBUSHIクラブで起きた殺人事件を解くことができるのだろうか!?