ここはZIRCON世界のどこかの山奥の、湖のほとり。 「秘境を絵に描きたい」 そう希望する旅行者のため、ツアーのガイド、護衛の男女計4名がこの人気のない場所に集まっていた。 集まっていた。この言い回しは実に正しい。 なぜなら今ここに立っているのは3人だからだ。 湖のほとりには今、無残にも噛み切られた護衛の男性の死体が転がっている。 獣の噛み痕だ。不幸な事故に違いない。 そう思われたその時、死んだ男の懐から何かが転がり落ち、ボイスが再生された。 ――男は湖のほとりで何者かに襲われ、意識を失っている。 誰ともなく顔を見合わせる。 観光地でもない山奥だ。 そして、この場にいるのは3人のみ。 この中の誰かが男を昏倒させ、獣に襲われる原因を作ったに違いなかった。

ここはどこかの星。 そこに住む人間によく似たイキモノ、ヌシの口の中。 口腔衛生(こうくうえいせい)はまずまずの快適な環境で、今日も左下顎エリア(ひだりしたあごえりあ)の歯たちは元気に食べ物を噛み砕き、すり潰していた。 ところが舌の舌島(ぜつじま)が、急に「君たちは直に(じきに)全員抜けて、新しい歯に生え変わる」などと言い始める。 左下顎エリアの歯は定期的に虫歯だらけになり、そして生え変わるのが常だというのだ。 静かになる歯たち。 そんな歯たちに向かって、舌島は続けた。 「その未来を変えるには、虫歯になりかけの歯を今のうちに抜くことができればいいのかもしれない」と。 かくして、歯たちは話し合いを始めるのだった。

魔王城の中で勇者が死んでいるのが発見された。 魔界メディアが空撮する自慢の魔王城テラスで、渾身の演出の中魔王に敗れるはずだった勇者。 魔王はカンカンだ。 一体誰が殺したのか？ フロア責任者のモンスターたちが魔王の前に引きずり出された。

貴族の子女が通うある名門校の卒業パーティーにて、ご令嬢が急死した。 死んだのは王子の婚約者候補の1人だったご令嬢。 死の間際に「ウッパパ」と言い残したと言う。 一体何があったのだろうか。